エナメル質形成不全の原因とは?妊娠中・乳幼児期・遺伝など時期別に歯科医師が解説

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「子どもの歯に白い部分がある」「生えてきた永久歯が前歯だけ茶色っぽい」「自分の歯の白い斑点は生まれつきと言われたけれど、何が原因だったのだろう」。こうした疑問から、エナメル質形成不全の原因を調べている方は少なくありません。

エナメル質形成不全は、歯が顎の中で作られている時期の出来事が関わって起こります。乳歯と永久歯では原因が関わる時期が異なり、白濁が出ている歯の位置から、おおよその時期を推測できることもあります。

この記事では、エナメル質形成不全の原因を時期と部位に分けて解説し、「妊娠中の過ごし方のせいでは」「発達障害と関係があるのでは」という不安にもお答えします。原因を知ったあとにできることまでお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。

エナメル質形成不全の原因は、歯が作られる時期の出来事にある

エナメル質形成不全の原因は、歯が作られる時期の出来事にある

エナメル質形成不全とは、歯の表面を覆うエナメル質が作られる途中で何らかの影響を受け、量や質が不十分なまま歯が完成した状態のことです。白い濁りや茶色の変色、表面のへこみや欠けとして現れます。定義や見た目の種類については、エナメル質形成不全とむし歯の見分け方を解説した記事で詳しくご紹介しています。

歯の白い斑点は虫歯?エナメル質形成不全?見分け方と対処法を歯科医師が解説

「なぜこの歯はこうなったのか」を考えるとき、手がかりになるのは「その歯がいつ作られたか」です。エナメル質が作り直されない理由、乳歯と永久歯で原因の時期が違うこと、時期によって見た目が変わることについて、次で詳しく解説します。

エナメル質は一度完成すると作り直されない

エナメル質は、エナメル芽細胞(がさいぼう)という専用の細胞によって作られます。この細胞は歯の頭の部分が完成するまで働き、歯が口の中に生えてくる頃には役目を終えてなくなります。

そのため、形成の途中で生じたエナメル質の不足や弱さが、後から補われることはありません。口の中に生えてきた時点の状態が、そのまま大人になっても残ります。骨や皮膚のように自ら作り直される組織とは、この点が大きく異なります。

「最近の歯磨きの仕方が悪かったのでは」「甘いものを食べさせすぎたせいでは」と心配される方もいらっしゃいます。しかし、エナメル質形成不全の原因となる出来事は、歯が生える前にすでに起きています。生えてからの生活習慣が、形成不全そのものの原因になることはありません。

乳歯と永久歯では「原因が関わる時期」が異なる

乳歯は、お母さんのお腹の中にいる妊娠4か月頃から硬い組織が作られ始めます。そして生後1年頃までに、歯の頭の部分がほぼ完成します。

一方、永久歯の前歯と6歳臼歯(6歳頃に生える最初の大人の奥歯)は、生まれた頃から作られ始めます。完成するのは3〜5歳頃で、それ以降に生える永久歯は、さらに遅い時期に作られていきます。

つまり、乳歯のエナメル質形成不全には妊娠中から乳児期の出来事が、永久歯の形成不全には乳幼児期の出来事が関わりやすいということです。永久歯のエナメル質形成不全の原因を考えるときは、「生まれてから数年の間に何があったか」が手がかりになります。なお、ここで挙げた時期はおおよその目安で、歯の種類や個人によって幅があります。

歯の種類エナメル質が作られる時期(目安)関わりやすい出来事
乳歯妊娠4か月頃〜生後1年頃妊娠中の母体の体調、早産・低出生体重、出産時のトラブル
永久歯の前歯・6歳臼歯出生前後〜3〜5歳頃乳幼児期の高熱・呼吸器の病気、乳歯の外傷・むし歯
その他の永久歯それ以降より遅い時期の出来事

白濁の出ている歯の位置から、原因の時期を推測できる

同じ時期に作られている歯は、同じ影響を同時に受けます。そのため、体全体に関わる出来事があった場合、左右の同じ歯の、同じくらいの高さに症状がそろって現れやすくなります。反対に、1本だけに症状がある場合は、その歯の周りだけに起きた出来事が考えられます。

「うちの子の場合は、どちらにあたるのだろう」と気になる方も多いと思います。歯科では、白濁の位置や範囲に加えて、妊娠中や幼少期の様子をうかがいながら原因を考えていきます。この後の章も、「左右対称か、1本だけか」という視点で読み進めていただくと分かりやすくなります。

原因が起きたタイミングで、白濁・欠け・茶色の見え方が変わる

エナメル質は、まず厚みを作る段階があり、その後に硬さを整える段階を経て完成します。どちらの段階で影響を受けたかによって、見た目が変わります。

厚みを作る段階で影響を受けると、エナメル質そのものの量が足りなくなります。この状態は「減形成(げんけいせい)」と呼ばれ、表面のへこみや溝、欠けとして現れます。

硬さを整える段階で影響を受けると、厚みはあってもミネラルが十分に行き届きません。この状態は「石灰化不全(せっかいかふぜん)」と呼ばれ、白い濁りや黄色〜茶色の変色として現れます。白く見えるのは、ミネラルの少ない部分で光が乱反射するためです。

同じエナメル質形成不全でも、へこみが目立つ方と、色の変化が目立つ方がいるのはこのためです。両方が混ざって現れることもあります。

影響を受けた段階名称主な見え方
厚みを作る段階減形成表面のへこみ・溝・欠け
硬さを整える段階石灰化不全白い濁り・黄色〜茶色の変色

エナメル質形成不全の全身的な原因|妊娠中・出産前後・乳幼児期

エナメル質形成不全の全身的な原因|妊娠中・出産前後・乳幼児期

複数の歯に左右対称で現れるエナメル質形成不全には、体全体に影響する出来事が関わっていると考えられています。これを「全身的な原因」と呼びます。

ただし、ひとつの出来事だけで形成不全が決まるわけではありません。いくつかの要因が重なって起こると考えられており、実際には原因をひとつに特定できないことも多くあります。

ここでは、妊娠中、出産前後、乳幼児期という3つの時期に分けて、研究で関連が報告されている要因を紹介します。薬や栄養との関係もあわせて、次で詳しく解説します。

妊娠中の要因|母体の体調不良や感染症

妊娠中の母体の病気や感染症、強いストレスなどが、お子様の歯の形成に関わる可能性が研究で報告されています。複数の研究をまとめた分析では、妊娠中に母体が体調を崩した場合に、6歳臼歯と前歯のエナメル質形成不全がやや多く見られたとされています。

乳歯は妊娠中から作られ始め、永久歯の一部も出生前後から準備が進みます。そのため、この時期の母体の状態が影響する可能性が考えられているのです。

「妊娠中に風邪をひいたのが原因だったのでは」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これらはあくまで「関連が報告されている」という段階の話です。妊娠中に体調を崩したことが、そのまま形成不全につながるわけではありません。同じ経験をしても、歯に影響が出ていない方のほうが多いことも知っておいていただきたい点です。

出産前後の要因|早産・低出生体重・出産時のトラブル

早産で生まれたお子様や、出生体重が少なかったお子様では、エナメル質形成不全が多く見られることが複数の研究で報告されています。特に乳歯で、その傾向がはっきりしています。

背景として考えられているのは、歯の形成に必要なカルシウムなどのミネラルの状態です。本来お腹の中で受け取るはずだった栄養を、早い時期から自分の体で調整する必要があり、歯を作る細胞に影響が出やすいと考えられています。

また、出産時のトラブルで赤ちゃんが一時的に酸素不足になった場合との関連を示す報告もあります。母子手帳を見返すと、出生時の週数や体重を確認できますので、歯科で原因を考える際の参考になります。

乳幼児期の要因|高熱をともなう病気や呼吸器の病気

生まれてから3歳頃までの時期に、高熱をともなう病気や、肺炎・ぜんそくなどの呼吸器の病気を経験した場合、永久歯のエナメル質形成不全が多く見られることが報告されています。

この時期は、ちょうど永久歯の前歯と6歳臼歯が顎の中で作られている時期と重なります。体が病気と闘っている間、歯を作る細胞の働きが一時的に乱れることが、影響の背景にあると考えられています。

「小さい頃によく熱を出していた」「入院したことがある」という記憶は、原因を考えるうえでの手がかりになります。一方で、乳幼児期に熱を出すことはごく一般的なことで、熱を出したお子様の多くは歯に影響が出ていません。この時期の病気を「防げたはず」と考える必要はありません。

薬(抗菌薬)や栄養状態は原因になる?

乳幼児期の抗菌薬の使用と、エナメル質形成不全との関連を示す報告はあります。ただし、薬そのものの影響なのか、薬が必要になった病気や発熱の影響なのかは、現時点で区別できていません。「薬のせいかもしれない」と、処方された薬を自己判断で中止することは控えてください。

なお、形成不全とは別に、歯が作られる時期にテトラサイクリン系という一部の抗菌薬を長く服用すると、歯が黄色や灰色に変色することが知られています。

栄養面では、ビタミンDやビタミンA、カルシウムの不足が要因として挙げられることがあります。ただ、通常の食生活を送っていれば、日本で問題になることは多くありません。

6歳臼歯と前歯に出るエナメル質形成不全(MIH)の原因

6歳臼歯と前歯に出るエナメル質形成不全(MIH)の原因

全身的な原因によるエナメル質形成不全のうち、6歳臼歯と永久歯の前歯に現れるものを「MIH(臼歯切歯石灰化不全)」と呼びます。「6歳臼歯が生えてきたら茶色かった」「前歯にも白い部分がある」という保護者の方の気づきから見つかることの多い状態です。

MIHの特徴や治療の概要は、ホワイトスポットの原因を種類別に解説した記事でご紹介しています。ここでは「なぜこの歯に出るのか」「どのくらいの人に見られるのか」という原因と頻度の面から、MIHについて次で詳しく解説します。

ホワイトスポットの原因を種類別に解説|矯正後・脱灰・生まれつきの違いと対処法

6歳臼歯と前歯に出やすいのは、作られる時期が重なるため

6歳臼歯と永久歯の前歯は、どちらも生まれた頃から作られ始める歯です。そのため、出生前後から乳幼児期に全身的な影響を受けると、同じ時期に作られていたこれらの歯に症状がそろって現れます。これが、MIHが「6歳臼歯と前歯」という組み合わせで見られる理由です。

6歳臼歯では、白い濁りのほか、黄色〜茶色の変色が出やすい傾向があります。ミネラルが少なく柔らかいため、生えてすぐに噛む力で表面が欠けてしまうこともあります。

「生えてきた永久歯が茶色いのは、もうむし歯になっているのでは」と心配される方もいらっしゃいます。生えた直後から色が違う場合は、むし歯ではなくMIHの可能性があります。ただし、MIHの歯はむし歯が進みやすいため、早めに歯科で状態を確認してもらうことが大切です。

日本の7〜9歳の約5人に1人に見られるという調査結果

日本全国の7〜9歳の子ども4,496人を対象とした調査では、MIHが19.8%に見られたと報告されています。およそ5人に1人の割合です。地域別では近畿地方が22.3%で、全国平均よりやや高い結果でした。

この数字から分かるのは、MIHが決して珍しい状態ではないということです。「うちの子だけがこうなってしまった」と心配しすぎる必要はありません。

一方で、MIHの原因ははっきりとは解明されていません。前の章で挙げた全身的な要因に加えて、生まれ持った体質(遺伝的な要因)が関わっている可能性も研究されている段階です。症状の程度も幅広く、わずかな白濁だけの方から、欠けをともなう方までさまざまです。

乳歯の奥歯に白濁がある場合に知っておきたいこと

乳歯のいちばん奥の歯(第二乳臼歯)にも、MIHと同じような白濁や変色が見られることがあります。第二乳臼歯は、6歳臼歯と近い時期に作られる歯です。第二乳臼歯にこうした症状がある場合、のちに生えてくる6歳臼歯にもMIHが見られる可能性が高いことが報告されています。

そのため、乳歯の段階で奥歯の変色に気づいた場合は、6歳臼歯が生えてきた時点で早めに歯科で確認してもらうことをおすすめします。生えたばかりの時期から状態を把握しておくと、欠けやむし歯に早い段階で対応しやすくなります。

乳歯の形成不全は「いずれ抜ける歯だから」と見過ごされがちです。しかし、永久歯の状態を予測する手がかりにもなります。

「前歯だけ」「1本だけ」に現れるエナメル質形成不全の局所的な原因

「前歯だけ」「1本だけ」に現れるエナメル質形成不全の局所的な原因

「左右対称ではなく、前歯の1本だけに白い部分がある」「永久歯の前歯だけが茶色っぽい」。このように特定の歯だけにエナメル質形成不全が見られる場合は、その歯の周りだけに起きた出来事が考えられます。これを「局所的な原因」と呼びます。

代表的なのは、先に生えていた乳歯のケガや炎症が、その下で作られていた永久歯に影響するケースです。乳歯の外傷、乳歯のむし歯による影響、そして見分けるための手がかりについて、次で詳しく解説します。

乳歯の外傷(転んでぶつけた)による永久歯への影響

乳歯の根のすぐ下では、次に生えてくる永久歯が作られています。そのため、乳歯を強くぶつけると、その衝撃や、その後に起こる炎症が、下で作られている永久歯に及ぶことがあります。

特に1〜3歳頃は、歩き始めて走り回るようになり、転んで前歯をぶつけることが多い時期です。この時期は、ちょうど永久歯の前歯が作られている時期と重なります。その結果、永久歯の前歯だけに白い濁りや茶色の変色、表面のへこみが現れることがあります。

「そういえば小さい頃、転んで前歯をぶつけたことがある」という記憶が、原因を知る手がかりになります。乳歯をぶつけた直後に見た目の変化がなくても、下の永久歯に影響が出ていることがあります。ぶつけたときは、一度歯科で診てもらうと安心です。

乳歯のむし歯や根の先の炎症による影響(ターナー歯)

乳歯のむし歯が進んで神経まで達すると、根の先に炎症が起こることがあります。この炎症が、下で作られている永久歯に及ぶと、その歯のエナメル質形成不全につながることがあります。

こうしてできた歯は「ターナー歯」と呼ばれます。乳歯の奥歯の下から生えてくる小臼歯や、前歯に見られることがあり、白い濁りや茶色の変色、形のゆがみとして現れます。

「乳歯はいずれ抜けるから、むし歯は治療しなくてもよいのでは」と考える方もいらっしゃいます。しかし、乳歯のむし歯を放置することは、次に生える永久歯の形成に影響するおそれがあります。乳歯のむし歯を早めに治しておくことは、永久歯を守ることにもつながります。

1本だけ・左右非対称という出方が見分ける手がかりになる

局所的な原因によるエナメル質形成不全は、1本だけ、または左右どちらかの歯にだけ現れるのが特徴です。これに対して全身的な原因によるものは、左右の同じ歯に対称に現れやすい傾向があります。

ただし、この特徴だけで原因を決めることはできません。エナメル質形成不全の歯に、後から初期むし歯による白濁が重なっている場合もあるためです。初期むし歯の白濁は、歯と歯ぐきの境目など、汚れがたまりやすい場所に出やすいという特徴があります。

「生まれつきの白濁なのか、むし歯なのか」の見分け方は、エナメル質形成不全とむし歯の見分け方の記事で詳しく解説しています。気になる場合は見た目だけで判断せず、歯科で確認してもらうことが安心につながります。

>>歯の白い斑点は虫歯?エナメル質形成不全?見分け方と対処法を歯科医師が解説

遺伝やフッ化物の過剰摂取など、エナメル質形成不全のその他の原因

遺伝やフッ化物の過剰摂取など、エナメル質形成不全のその他の原因

ここまで紹介した全身的な原因や局所的な原因とは別に、エナメル質形成不全には、生まれ持った遺伝子の変化によるものや、歯の形成期にフッ化物を過剰に摂取したことによるものもあります。

どちらも頻度は高くありませんが、原因を考えるうえで知っておきたいものです。あわせて、原因をひとつに特定できないケースが多いという実情についても、次で詳しく解説します。

遺伝性のエナメル質形成不全症

エナメル質を作るのに必要なたんぱく質の遺伝子に変化があると、エナメル質が十分に作られない病気が生じることがあります。これを「遺伝性エナメル質形成不全症」と呼び、まれな病気として知られています。

この病気では、乳歯と永久歯のほぼすべての歯に、エナメル質が薄い、もろい、黄色や茶色に変色するといった症状が現れます。家族の中に同じような歯の状態の方がいることが多いのも特徴です。

「子どもの形成不全は遺伝したのでは」と心配される方もいらっしゃいます。しかし、特定の歯だけに症状がある場合や、左右の一部の歯に限られる場合は、遺伝性のものとは考えにくいのが一般的です。多くのエナメル質形成不全は、遺伝によるものではありません。

歯が作られる時期のフッ化物の過剰摂取(歯のフッ素症)

歯が作られる時期に、飲料水などから過量のフッ化物を長期間摂取すると、左右対称に白い縞模様や斑点が現れることがあります。これを「歯のフッ素症(斑状歯)」と呼びます。

日本の水道水にはフッ化物の濃度基準が定められており、実際の濃度も基準を大きく下回っています。そのため、国内で生活してきた場合に、飲料水が原因でフッ素症が生じる可能性は高くないと考えられています。年齢に応じた量を守ったフッ素入り歯磨き粉の使用や、歯科医院でのフッ素塗布が原因になるものでもありません。

幼少期を海外で過ごした経験がある場合は、診察の際にお伝えいただくと参考になります。詳しくは歯のフッ素症の原因と治し方を解説した記事をご覧ください。

>>歯のフッ素症(斑状歯)とは?原因・症状の特徴と治し方を歯科医師が解説

原因がひとつに特定できないことも多い

ここまで紹介してきたエナメル質形成不全の原因は、いずれも「関連が報告されている」ものです。実際の診療では、原因をひとつに特定できないことが少なくありません。

いくつかの要因が重なっている場合もあれば、思い当たる出来事がまったくない場合もあります。特に大人の方では、幼少期の病気や出来事を詳しく覚えていないのも自然なことです。

「原因がわからないと、治療もできないのでは」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、治療の方針は原因よりも、白濁の深さや欠けの有無といった今の歯の状態で決まります。原因がはっきりしなくても、状態に合った対処を選ぶことができます。この点は、記事の後半でお伝えします。

エナメル質形成不全は「母親のせい」?発達障害との関係は?よくある不安への答え

エナメル質形成不全は「母親のせい」?発達障害との関係は?よくある不安への答え

エナメル質形成不全について調べている保護者の方から、特に多く寄せられるのが「妊娠中の自分の過ごし方のせいでは」「発達障害と関係があるのでは」という不安です。インターネット上の情報を見て、心配が強くなっている方もいらっしゃるかもしれません。

ここでは、この2つの不安について現時点でわかっていることをお伝えします。これから生まれてくるお子様のためにできることもあわせて、次で詳しく解説します。

エナメル質形成不全は「母親のせい」ではない

妊娠中の母体の体調が、エナメル質形成不全の要因のひとつとして研究されているのは事実です。しかし、それは病気や感染症など、ご本人が避けようのない出来事との関連を調べたものです。お母さんの行動に責任があるという意味ではありません。

さらに、早産や出産時のトラブル、乳幼児期の発熱、転んで歯をぶつけるといった出来事も、多くは予防しきれないものです。原因をひとつに特定できないことも多い中で、ご自身を責める理由はありません。

「私のせいで、この子の歯が弱くなってしまった」という気持ちを抱えている方もいらっしゃると思います。大切なのは原因を探し続けることではなく、今あるお子様の歯をむし歯から守っていくことです。

発達障害との関係について現時点でわかっていること

エナメル質形成不全と発達障害の間に、直接の因果関係があることは現時点で確認されていません。

この2つが結びつけて語られることがあるのは、早産や低出生体重など、どちらにも関わりうる出生前後の出来事があるためと考えられます。共通する背景が話題になることはあっても、一方が他方の原因になるという研究結果は示されていません。

そのため、エナメル質形成不全があることが、発達障害のサインになるわけではありません。歯の状態だけを見て、発達について心配しすぎる必要はないと考えられます。お子様の発達について気になることがある場合は、歯とは別に、小児科や自治体の子育て相談窓口にご相談ください。

生まれてくるお子様のために、今からできること

エナメル質形成不全を確実に防ぐ方法は、現時点ではありません。そのうえで、できることはいくつかあります。

妊娠中は体調管理を心がけ、妊婦健診を定期的に受けることが基本です。歯が生えてからは、年齢に応じた量のフッ素入り歯磨き粉で毎日歯を磨き、むし歯を予防していきます。

また、乳歯のむし歯を早めに治しておくことは、下で作られている永久歯への影響を防ぐことにつながります。乳歯をぶつけたときに歯科で確認してもらうことも、同じ意味で大切です。エナメル質形成不全があっても、生えてからのケアを続けることで、むし歯のリスクを抑えることが期待できます。

大人になってからエナメル質形成不全になることはある?

大人になってからエナメル質形成不全になることはある?

「最近になって歯に白い部分があることに気づいた。大人になってからエナメル質形成不全になったのだろうか」。このような疑問をお持ちの方もいらっしゃいます。

エナメル質形成不全は、歯が顎の中で作られている時期に生じるものです。すでに口の中に生えている大人の歯に、新たにエナメル質形成不全が起こることはありません。

大人になってから気づいた場合も、多くは子どもの頃から存在していたものです。ホワイトニングで歯全体が白くなったことや、写真で自分の口元を見る機会が増えたことをきっかけに、目に留まるようになったと考えられます。

一方で、「以前は確かになかった白い部分が、最近できた」という場合は、別の原因を考える必要があります。後から生じる白濁の代表は、むし歯菌の酸によってミネラルが溶け出す初期むし歯(脱灰)です。違いについては見分け方を解説した記事でご紹介しています。

>>歯の白い斑点は虫歯?エナメル質形成不全?見分け方と対処法を歯科医師が解説

また、「エナメル質形成不全が治った」という話を目にすることがありますが、エナメル質そのものが元の状態に戻ることはありません。ただし、白濁を目立たなくすることをめざす方法はあります。次の章でご紹介します。

原因がわかったあとに考えたい、エナメル質形成不全の治療とケア

原因がわかったあとに考えたい、エナメル質形成不全の治療とケア

エナメル質形成不全の原因を知ることは、ご自身やお子様の歯を理解する助けになります。ただし、実際にどう対処するかは、原因の種類よりも、白濁の深さ、欠けの有無、むし歯があるかどうかといった今の歯の状態で決まります。

ここでは、状態を確認するための診断、お子様の場合の考え方、見た目が気になる大人の方の選択肢について、次で詳しく解説します。ホワイトスポット治療の全体像は、ホワイトスポット治療のページでもご紹介しています。

透照診で白濁の深さを確認してから方針を決める

当院では、治療方針を決める前に、透照診(とうしょうしん)という検査を行っています。歯に光を当てて透かし、白濁が歯のどのくらいの深さまで及んでいるかを確認する方法です。

あわせて、白濁の位置や範囲、幼少期の様子などをうかがいます。原因がはっきりしない場合でも、これらを組み合わせることで、今の歯に合った方法を検討できます。

白濁が浅い場合は、歯を削らない方法で対応できる可能性があります。深い場合は、表面をわずかに整えてから処置を行ったり、別の方法を組み合わせたりすることがあります。「自分の場合はどの方法になるのか」は、実際に診てみないとわからない部分もあるため、その点も含めて事前にご説明しています。

お子様の場合|むし歯予防と定期的な確認を優先する

お子様のエナメル質形成不全では、見た目の改善よりも、むし歯を防ぐことが優先されます。形成不全の部分はエナメル質が弱く、むし歯が進みやすいためです。その理由はこちらの記事で詳しく解説しています。

>>歯の白い斑点は虫歯?エナメル質形成不全?見分け方と対処法を歯科医師が解説

歯科医院では、フッ素塗布や定期的な状態の確認を続けていきます。欠けやすい6歳臼歯には、表面を保護するための処置を検討することもあります。

ご家庭では、年齢に応じた量のフッ素入り歯磨き粉を使い、仕上げ磨きで形成不全の部分を丁寧に磨くことを心がけてください。見た目の治療は、歯の成長やお子様ご本人の気持ちを見ながら、時期を相談して検討していきます。

見た目が気になる大人の場合|削らないICON治療を含めた選択肢

白濁が気になる大人の方には、歯を削らずに白濁を目立たなくすることをめざすICON(アイコン)治療という選択肢があります。エナメル質内部の隙間に液状の樹脂を浸透させて固め、光の乱反射を抑える方法です。

多くの場合、ホワイトニングで歯全体の色を整えてからICONを行います。茶色の変色をともなう場合は、ホワイトニングを先に行うことが特に大切です。へこみがある場合や範囲が広い場合は、ダイレクトボンディングやラミネートベニアも選択肢になります。

歯の状態検討される選択肢
白濁が浅く、へこみがないICON治療
茶色の変色をともなうホワイトニング先行 → ICON治療
白濁が深部に及ぶエナメル質を研削してからICON治療
へこみがある・範囲が広いダイレクトボンディング・ラミネートベニア
深さが不明確まず透照診で確認 → 方針決定

いずれも自由診療で、効果には個人差があり、白濁が完全に消えるとは限りません。エナメル質形成不全へのICONの使用は、製品の添付文書の適用範囲とは異なるため、説明と同意のうえで行います。ホワイトニングでは一時的に知覚過敏が出ることもあります。治療法の詳細はホワイトスポットの治し方を解説した記事をご覧ください。

>>ホワイトスポットの治し方完全ガイド|再石灰化・ICON・ダイレクトボンディング・ラミネートベニアを段階別に解説

ICON治療で白濁がどのように変化するのかは、文章だけではイメージしにくいかもしれません。当院で実際に行ったICON治療の経過を、症例としてご紹介しています。

ICON治療の症例紹介

実際にホワイトニングとICON治療を行った症例では、歯の色味がどのように変化するのかを画像でご覧いただけます。治療のイメージをより具体的につかみたい方は、こちらから実際の症例をご覧ください。

治療前
治療後
年齢20代
性別女性
主訴前歯の白いのが気になる
治療回数3回
治療内容ICON2本(ホームホワイトニング)
費用ICON:1歯/55,000円(税込)
ホームホワイトニング:33,000円(税込)
院長コメント
以前矯正治療をされていた患者さまです。昔からホワイトスポットがあったものの、矯正治療後少し広がった気がするとおっしゃられてました。右上のホワイトスポットがまだらで、少し深かったためホームホワイトニングの期間を1ヶ月程していただきました。処置の結果には大変満足していただき、現在も継続して検診に通っていただいております。

その他のホワイトスポット症例もご覧になりたい方は、下記をご覧ください。
ICON治療の実際の症例を見る

まとめ:エナメル質形成不全の原因を知り、今の歯の状態に合った対処を

まとめ:エナメル質形成不全の原因を知り、今の歯の状態に合った対処を

エナメル質形成不全の原因は、歯が顎の中で作られている時期の出来事にあります。乳歯は妊娠中から乳児期、永久歯の前歯と6歳臼歯は出生前後から乳幼児期の出来事が関わりやすく、白濁の出方から原因の時期を推測できることもあります。

原因には、妊娠中や乳幼児期の体調といった全身的なもの、乳歯のケガやむし歯による局所的なもの、遺伝やフッ化物によるものがあります。ただし、原因をひとつに特定できないことも多く、お母さんのせいではありません。

対処の方法は、今の歯の状態によって決まります。お子様はむし歯予防を中心に、見た目が気になる大人の方は、歯を削らない方法を含めた選択肢から検討できます。白濁の状態や治療の進め方について、相談・カウンセリングを承っております。気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

ホワイトスポット治療の詳しい内容は、こちらのページもあわせてご覧ください。

>>ホワイトスポット治療に関して

みなみもりまち歯科クリニック 院長 杉本 紳也(歯科医師)

執筆・監修

みなみもりまち歯科クリニック 院長

杉本 紳也歯科医師

ダイレクトボンディング・部分矯正など、削る量を抑えた審美歯科治療を専門としています。

経歴・所属学会をみる

大阪歯科大学卒業後、京都第一赤十字病院 歯科口腔外科にて研修。大阪府内の開業医での勤務を経て、大阪市北区西天満にみなみもりまち歯科クリニックを開院。ダイレクトボンディングや部分矯正をはじめとする審美歯科治療を多く手がけ、「できる限り削らない・痛くない治療」を大切にしています。

  • 日本口腔インプラント学会 会員

院長・医院の詳しい紹介はこちら

本記事は、みなみもりまち歯科クリニック 院長・杉本紳也(歯科医師)が執筆・監修しています。内容は診療ガイドラインや学会発表等をもとに作成していますが、症状や適切な治療方針には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず歯科医院にご相談ください。



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